一回性

最近、企業経営において「戦略」という言葉が盛んに用いられるようになった。
このため、企業戦略や経営戦略に関しては、実に多くの「教科書」や「経営書」が出版されている。
しかし、これらの書籍は、「戦略」の本質そのものを語っているわけではない。
なぜならば、「戦略」の本質は、本来、「言葉にて語り得ぬもの」だからである。
そして、「戦略」の本質は、まさしく「一回性」を前提とした「アート」に他ならないからである。
「アート」である限り、「戦略」の本質は、決して「教科書」や「マニュアル」にはならない。
それは、あたかも、画家が「絵具の調合方法」や「絵筆の使用方法」という「テクニック」(技術)を教科書やマニュアルによって学ぶことができても、絵画という「アート」(芸術)の本質を教科書やマニュアルによって学ぶことはできないのと同じことである。
それは、本来、体得することによってしか得られぬ「臨床の知」や「身体性の知」であり、本来、言葉にて語り得ぬ「暗黙の知」なのである。
画家にとって、ある「心象風景」を与える対象は、ただ「一回」しかないのと同様に、経営者にとって、ある「戦略的判断」を求める局面というものは、やはり、ただ「一回」しかない。
その風景とまったく同じ風景は決して存在せず、その局面とまったく同じ局面は決して存在しないのである。

          -----田坂広志著「まず、世界観を変えろ」----

  

 実践の中から学び、成長し続ける

そのために、目の前の問題を課題化し、愚直に進むことが大切だと思いました

                                      オーチマン